ゴミ屋敷化の背景に、過剰な数の動物を飼い集め、適切に管理できなくなる「アニマルホーディング」という現象が潜んでいることがあります。これは、単なる多頭飼育とは異なり、精神医学的な側面が強い深刻な依存症の一種です。ホーダー(収集癖のある人)たちは、しばしば深い孤独感や喪失感を抱えており、それを埋めるために動物たちを必要とします。彼らにとって、犬たちは自分の存在を無条件で肯定してくれる唯一の存在であり、どんなに環境が不衛生になっても「自分がいないとこの子たちは生きていけない」「この子たちがいなくなると私は死んでしまう」という強い妄想的な使命感に支配されています。皮肉なことに、その「愛情」と称される執着が、結果として犬たちをゴミの山に閉じ込め、病気や餓死へと追い込んでしまうのです。アニマルホーディングが進行すると、部屋は犬の排泄物と生活ゴミで埋め尽くされ、飼い主自身もセルフネグレクト(自己放任)の状態に陥ります。死んだ動物がゴミの中に放置されるという凄惨な事態も珍しくありません。周囲が介入しようとしても、ホーダーは「自分は動物を救っている」という信念を持っているため、激しく抵抗し、支援を拒みます。この問題を解決するためには、ゴミの清掃や動物の没収といった物理的な対処だけでは不十分です。飼い主自身の心のケア、孤独の解消、そして精神医学的な治療が並行して行われない限り、場所を変えて再び同じ悲劇を繰り返す可能性が極めて高いからです。地域社会や福祉、医療、動物愛護団体が連携し、一人の人間を孤独から救い出すことが、巡り巡ってゴミ屋敷の中に取り残された犬たちを救う唯一の道となります。ゴミ屋敷の中の犬たちは、飼い主の心の叫びを身代わりに受けている犠牲者です。私たちは、不潔な環境の背後にある「孤独」という病理を直視し、多角的な支援の手を差し伸べる必要があります。清潔な環境を取り戻すことは、物理的な掃除であると同時に、歪んでしまった愛情を健全な形へと修復していく、気の遠くなるような再生のプロセスでもあるのです。
孤独な心が招くアニマルホーディングの罠