ゴミ屋敷の片付け後、リフォームを行う上で、最も基本的かつ、最も重要なのが、「床」と「壁」の修繕です。なぜなら、この二つの箇所は、ゴミ屋敷がもたらした、目に見えるダメージと、目に見えないダメージを、最も深刻に受けている場所だからです。床と壁を根本からやり直すことが、真の意味での原状回復、そして健康的な生活空間を取り戻すための、絶対条件となります。まず、「床」についてです。ゴミ屋敷の床は、様々な液体によって、深刻な汚染を受けています。飲み残しのジュース、腐敗した食品から出た汁、ペットの排泄物、そして湿気によって結露した水分。これらの液体が、長年にわたって、フローリングや畳、カーペットに染み込み、その下の床板や、さらには床を支える根太といった構造材までも、腐食させているケースが少なくありません。表面をクリーニングしただけでは、この内部の腐食や、染み付いた臭い、そしてカビの温床を取り除くことはできません。床材を全て剥がし、下地の状態を確認し、必要であれば構造材から交換する。この徹底した修繕が、床の強度と安全性を回復させ、悪臭の元を断つために不可欠なのです。次に、「壁」です。壁紙(クロス)は、臭いを吸着しやすい性質を持っています。ゴミ屋敷の強烈な生活臭やタバコのヤニは、壁紙の表面だけでなく、その裏側にまで浸透しています。また、壁に接していたゴミの湿気によって、壁紙の裏側では、目に見えないカビが大量に繁殖していることがほとんどです。このカビの胞子は、アレルギーや呼吸器疾患の原因となり、健康に深刻な影響を及ぼします。したがって、壁紙を剥がし、下地である石膏ボードの状態を確認し、カビの殺菌処理を行った上で、新しい壁紙に張り替えることが、衛生的な環境を取り戻すために絶対に必要なのです。床と壁は、部屋の面積の大部分を占める、いわば空間の「皮膚」です。この皮膚を、古い角質ごと剥がし、新しい健康な皮膚に生まれ変わらせること。それが、ゴミ屋敷リフォームの、最も本質的な目的と言えるでしょう。