業者に依頼し、あるいは自らの手で、あれほど苦労して片付けたはずの部屋が、気づけばまた物で溢れかえっている。ゴミ屋敷のリバウンドは、経験した者にしかわからない、深い絶望感と自己嫌悪をもたらします。なぜ、一度は綺麗になったはずの空間が、再びゴミの山へと逆戻りしてしまうのでしょうか。その原因は、単なる「だらしなさ」や「片付けが苦手」といった表面的な問題ではなく、多くの場合、その人の心や生活の根底に潜む、より深刻な問題に根差しています。リバウンドの最大の原因の一つは、ゴミ屋敷を生み出した根本的な問題が解決されていないことにあります。例えば、物を捨てられない、ため込んでしまう背景には、ADHD(注意欠如・多動症)の特性である不注意や計画性の欠如、あるいは、うつ病や統合失調症といった精神疾患による意欲の低下や判断力の喪失が隠れていることがあります。また、加齢による身体機能の低下や認知症、社会からの孤立によるセルフネグレクト(自己放任)も、ゴミ屋敷化の引き金となります。これらの根本原因を放置したまま、物理的に部屋を片付けたとしても、それは一時的な対症療法に過ぎません。蛇口から水が漏れ続けているのに、床を拭いているのと同じ状態なのです。水漏れの原因である蛇口を修理しない限り、床は何度でも濡れてしまいます。同様に、物を溜め込んでしまう心のメカニズムや生活上の困難に対処しない限り、部屋は再び物で埋め尽くされてしまうのです。さらに、一度綺麗になった部屋での生活に対するプレッシャーも、リバウンドの一因となり得ます。「この綺麗な状態を維持しなければ」という強迫観念が、かえってストレスとなり、何か一つでも物を置いてしまうと、「もうダメだ」と自暴自棄になって、片付ける意欲そのものを失わせてしまうのです。ゴミ屋敷のリバウンドを防ぐためには、部屋の片付けと並行して、あるいはそれ以上に、その背景にある心や体の問題、社会との繋がりについて、専門家の助けを借りながら丁寧に向き合っていく必要があります。
なぜまたゴミ屋敷に戻ってしまうのか